酔いどれクリスマス 04





 クラウドの身体を下に巻き込んで、ザックスはベッドの上で精力的に腰を動かしていた。
「気持ち…よさそだな、おまえ…」
「…っ、も、許し…っ」
 クラウドはザックスに与えられる感覚に、シーツに押しつけられた身体を桃色に染めて首を横に振った。汗で湿った髪の毛がシーツの上でパサパサと音を立てた。
 意地悪くザックスが一際大きく腰を引いてまた押し戻すと、クラウドは背中をよじり甘い悲鳴を上げる。
 短い息を吐きながら、涙でしっとりと濡れた瞳で顔を寄せてくるザックスを見上げた。
「ひど…っ」
 ぽろりとクラウドの赤く染まった眦から涙が流れ落ちる。
 自分の身体の下でかわいらしく小さく震えている恋人の下肢を見下ろして、ザックスは微笑んだ。
「俺も気持ちいい、最高。おまえもちゃんと我慢、できたな」
「あ、…は、はぁ、ん…っ、だって…っ」
 ザックスはクラウドの下肢に手を伸ばす。
 クラウドの中心で反り返り震えているその濡れた先端を、ザックスが指の腹でくすぐるように触れると、クラウドの身体は緊張したようにびくりとひきつった。
「や…、だめ…っ」
 とろりと蜜が溢れる。それが屹立の根本を戒めるように絡められているクラウドの細い指を新たに濡らした。
 ザックスは濡れたクラウドの指につうっと指先を走らせた。
「ちょっと出ちゃったな。もっとちゃんと指に力入れてなきゃ」
「……ばか…っ」
「震えてる、かわいそうに。んなに我慢しなくてもいいのに」
「まだ…いやだ…って」
「いっつもそんなの気にしないだろ。何度でもいかせてやるのに」
「そ…やって、っ…いっつも俺ばっか…」
 自分だけがいつもザックスの手管に翻弄されて、いいようにされているような気がして。それがなんだか不公平だとクラウドは不満なのだ。
 どうしても行為の性質とふたりの関係上、クラウドがほとんど受身になってしまうのは仕方が無くて、ザックスもクラウドの身体を攻め立てるのがまた大好きなので、いつもそういうセックスの流れになってしまうのだが。
 今日もこのままだとすっかりザックスのペースだとクラウドは本当に悔しそうな目でザックスを睨む。けれど潤んだ目でそんな顔をしたって迫力は少しも出ない。ザックスの目にはかえって、よりかわいらしさを強調した恋人にしか映らず、ザックスは身体を倒すと笑ってクラウドの唇をふさいだ。呼気を盗むようなねっとりとしたキスを交わす。
 今夜は二人の身体が近づくと酒のにおいを強く意識する。
 ザックスは腰を前後に動かしながら、屹立を戒めているクラウドの指の上に自分の手を重ねて、上からさらに力を入れて握りこんだ。
 重ね合わせた唇の隙間からクラウドが鼻から抜けるような甘えた声を出す。
「…そだな、じゃあ今夜はとりあえず、最初は一緒にいこうか、クラウド」
「…う、あ…ザックスはやく……っ」
 クラウドが自分から腰を揺らす。つながった場所が淫らな音をたてる。
「わかってる、けど、もうちょっと我慢、な」
 ザックスがクラウドの一番感じる場所を狙って強くこすりあげれば、クラウドの身体は従順にひどく悦んだ。感じ入って収縮する隘路に、ザックス自身もしびれそうな快感を得る。
「あ、あ、あ、や、だめ、もっと…っ、やあ…っ」
「…ホントにすごいな、おまえ」
 何度抱いてもその度にザックスは感動する。
 果たして喰われているのはどちらなのか。
 どうしてクラウドの身体はこんなに自分にぴったりなんだろう。麻薬か中毒のように病みつきになる。
 単に肌に合う、相性がいいという理由だけでは片付けられないような気がする。いや、実際それも勿論ばっちりなのだが、もっとこう存在の根本的な部分での相性というか、スピリチュアル的に言えば魂的な?そんなものが二人でいると満たされるような、自分に足りないものを補完してくれるような…。
 クラウドと抱き合うことで、安心感や充足感を得られることが心地いいのかもしれないとザックスは考える。


 外から微かに鐘の音が聴こえてきた。街の外れにある小さな教会からだろう。
 音につられるようにザックスがベッドの脇にある窓の外に目をやると、暗い闇の中に白っぽい小さなものがひらひらと舞っているのに気がついた。
 昼間に聞いた天気予報では、降水確率も低く、降っても雨だと言っていたが、どうやら天の神様はこのイベントの日に気を利かせて雪を降らせてくれたらしい。
「クラウド、雪」
「ん…、ックス、おねが…」
 もうとっくに限界を超えているのに、さっきからずっと焦らされているクラウドには、目の前のザックスのこと以外に意識を向ける余裕なんてどこにもなかった。
 どろどろになった身体をザックスにどうにかして欲しいし、どうにかできるのもザックスだけだ。はやく、はやく欲しい。欲しくてたまらない。

 鐘の音が新しい日付を告げる。

「メリークリスマス、クラウド」
「…っ、ああ…っっ!」
 ザックスは恋人に許された深い場所に己を解き放つ。
 同時にクラウドを戒めていた指から力を抜くと、クラウドの屹立から勢いよく噴き出した白濁が彼の薄い腹から胸にかけて飛び散った。





「……結局いつもと同じだ……」
 力をなくした身体をシーツの上に預けて、乱れた息を整えながらクラウドはぼそりと呟いた。投げ出した足の間には、まだザックスの身体を挟んだままだ。
「いっぱい出たな」
 腹の上に散った白濁をザックスは戯れるように指で伸ばした。くすぐったいのかクラウドが身体をよじる。
「…あんただってなんか…いつもより長…、しつこかった…」
「おまえを満足させられるように今まで以上にがんばんないと。じゃないと俺の貞操が危ないらしいって分かったから」
「…馬鹿」
 クラウドは上半身を起こすと、自分から動いて慎重にザックスの屹立を引き抜いた。
 塞いでいたものを失った場所から、ザックスが放ったものの量の多さを示すようにとろとろと白濁が溢れてくる。
「…」
 こぼしてしまったものがシーツの上を濡らす光景をザックスの視界から隠したくて膝を閉じる。こればかりは粗相をしてしまったような恥ずかしさにクラウドはいつも苛まれる。
 サイドテーブルからクラウドがティッシュを取ろうと手をのばしたら、それよりも先にザックスの手がその箱を取り上げた。
「俺が拭いてやるよ」
 本人は「にっこり」笑ったつもりなのだろうが、クラウドにはその顔が「にやり」にしか見えなかった。
「なんだよクラウド、その顔」
「……いい、シャワー浴びてくる」
「遠慮すんなって。ていうかまだ夜は始まったばっかだろ。日付も変わったばっかだし、シャワーには早いって」
「……」
 ザックスは人のいい笑顔を浮かべながら、閉じられたクラウドの膝に手をかけて強引に恋人の足を開こうとする。それを拒絶しようとするクラウドとの間で攻防がしばらく繰り広げられたが、そうやってじゃれあっているうちに、なんだかまたぶわあっと気持ちが高ぶってきて(主にザックスが勝手に盛り上がって)第二ラウンドに突入することになった。










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