ばかばかだいすき
その日、マスタング邸のリビングルームで3人の男が顔をつき合わせていた。
ロイ・マスタング。国軍大佐。ちょっと、いやかなり童顔。
ジャン・ハボック。地位は少尉。重度のヘビースモーカー。犬気質。
そして、マース・ヒューズ。地位は中佐で病的に子煩悩。そしておせっかいやき。
3人の間に流れる空気は決して和やかなものではなかった。そわそわと落ちつかなげに視線を泳がせているロイの隣には、大きな身体を少し縮めて居心地悪そうにハボックが、そして2人を睨むようにしてその前にヒューズが座っている。
(今すぐここから逃げたい……!)
冷や汗だらだらなロイとハボックである。
ついにバレてしまったのだ。
「……で?いつからなんだ」
「え?」
「いつからお前たち、付き合ってんのかって聞いてるんだよ」
「い、いつからって、いつからだったかな、ハボック…?」
「え!?あ、そそそ、そうですね、いつだったかな。に、2ヶ月前ぐらいでしたっけ?」
「そ、そうだったか?」
「そ、そうですよ」
「う、うむ」
「………」
「………」
「………」
「……ロイ、お前昔、男なんて気色悪いって散々言ってたよな?それがなんでよりにもよって、美しくもかわいくもないこーんなムサい大男に走ったんだよ?」
「ムサい……」
「ヒューズ、これは私の問題であってお前にとやかく言われる筋合いは…」
「ある!お前の隣には美しい婦人のほうが絶対似合う!こんな図体だけがムダにでかい犬男なんかやめて綺麗なお嬢さんと結婚しろ!」
「ムダにでかい…犬男……」
「ヒューズ、言いすぎだ。こいつは私のことをよく分かってくれている。私には過ぎたパートナーだと思っているよ」
「た、大佐ぁ……!!」
「ロイ、お前こんなののどこがいいんだ。冷静になれよ。女と結婚して子供を作れ。かわいいぞ。世界観が変わる。どのみちこんな男と一緒にいたってそのうち飽きるさ。目を覚ませ、ロイ」
「ひどいっすよ、中佐!俺たち愛し合ってるんです!大佐と俺のどこが似合わないんですか!ばっちりでしょ、もうサイコーにお似合いでしょ!?」
「ハボック、ちょ…、冷静に……」
「ああん?!どこが似合うって言うんだよ?!」
「似合いますよ!大佐は俺の腕におさまるジャストサイズですよ!相性だって最高です!」
「バカ、ハボック、それ以上はやめ……っ」
「中佐は知らないでしょうけど、アッチの相性だって最高なんですから!!」
「ハーボーック!!!!」
バカはこぶしを握って力説した。アッチって、どっちだ。
「………お前……」
「………あ、」
「……少尉、俺は今、したくない想像をしちまったんだが、どうしてくれる」
「あ、あはははは……」
「そうだよな。大の大人が付き合ってるって言えば清い関係のままのはずがないよな。ぶっちゃけ、どうなんだよ。地位的には少尉が……だろうけど、やっぱ体格的に考えてロイが下なのか?下克上?」
「ヒュ、ヒューズ、何を聞くんだ!そんなこと……っ」
「わー、やっぱり少尉に足開いて突っ込まれてんのか。俺のロイが……ロイが……」
「わ、悪いですか!?俺のロイとか言わないでくださいよ!大佐は俺のです!」
「俺のロイがこんな男にバコバコと……さめざめ」
「い、いいじゃないですか、大佐は俺のです!!セックスのあとのあまえんぼうの大佐を中佐はご存じないでしょう!そりゃあもうカワイイんですから!俺の腕の中でだけべったべたなんですからね。ザマーミロです!」
「なな、なんだとぅ!?」
「おい、お前たち、いい加減に……」
「大佐と俺は『運命の相手』なんです!身も心も汁だくな超ラブラブなんです!いつでもどこでもビンビンです!だから邪魔しないでください!」
「生意気な!お前ロイのあの秘密知ってるか!?知らねえだろう、アレだよ、アレ!ははは、お前は所詮ロイにとってそんなモンなんだよ!」
「あの秘密?あの秘密ってなんですか!?大佐、ちょっとそれって」
「なあロイ、アレは恥ずかしくて、いくら愛しているからっていってもなかなか人には言えねえよなあ。とくにこいつには」
「ななな、なんなんですか!?大佐!?」
「……き……」
「き?」
「貴様ら、いい加減に黙らんか!!!」
焔の錬金術師。頭に血が上ると所かまわず発火布を手にはめ、どっかーん。
その日、マスタング邸は主の手により半焼、半壊したのだった。
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20060509up
ただ3人の馬鹿な言い合いが書きたかったんです。スミマセン…。