morning
柔らかい日差しに包まれている。
隣にはいとおしい人。
朝の遅い時間、ベッドの上でこんなふうにぬくもりを抱き寄せてまどろんでいる、なんて幸せなひととき。
目の前の黒髪を撫でた。滑らかな、すくい取った手からさらさらとこぼれ落ちる艶やかな髪。その手触りをとても気に入っている。
ふと、腕の中の人が小さく身じろいだ。
「んー………ぅ……」
身体を摺り寄せるようにして、さらに腕の中にもぐりこんでくる。
互いのむき出しの肌が、毛布の下でぴたりとくっついて、優しくぬくもりを分かち合う。
なんて、幸せな時間だろう。
ハボックは自分の胸で静かな寝息をたてているいとしい恋人の姿に、たまらなく胸がいっぱいになった。
昨夜は本当に久しぶりの逢瀬で、自分でも驚くくらい何度も恋人の身体を求めた。彼もそれに応えてくれたし、心なしかいつも以上に奔放に自分を求めてくれたように思う。ハボックはいつも以上に温かくてやわらかい身体を抱きつぶし、中に入り、彼もまた自分の身体の下で感極まって何度も鳴いた。
今はもうそのときの嵐のような熱は鎮まり穏やかな気持ちで満たされているが、まだこの部屋のどこかにその情熱の欠片が漂っているような気がしている。
恋人は目元にセックスの疲れをにじませて、今は健やかに眠っている。
「………」
ハボックはとても幸せで嬉しくなって、恋人の唇を軽く吸った。
それでも彼は目を開けずに、寝息を立てたままだ。だが、きっとハボックがキスしたことには気がついている。その証拠に眉間に軽く皺が寄った。
ハボックはいたずら心を刺激されて再び唇を重ねた。今度はさっきよりも深く。
舌を進入させて歯をこじ開け、恋人の舌をからめとる。執拗に口内を舌で愛撫しているうちに、最初は縮こまっていた彼の舌も次第に応えるようになってきた。
「ん……ふ………っ、ん」
彼の瞳が薄っすら開いた。
どうやらいとおしい自分の眠り姫はお目覚めらしい。
黒い瞳が潤んでそれが色っぽくて、ハボックは調子に乗って背中を抱いていた手を移動した。背中のラインをたどるようにして撫で、腰へと。その手の動きに性的な雰囲気を嗅ぎ取ったのか、腕の中の恋人はとたんに暴れだした。
「ハ、ハボック!朝からサカるな……!」
キスから逃れて身体を離そうともがく。
「だって大佐かわいいし」
「かわ…っ、お前、私を愚弄するか!」
「滅相もない。俺の恋人はホントにもう食べちゃいたいくらいかわいいんですから。ね、大佐」
「かわいい言うな!」
恋人はがっちりとホールドされた腕からは自力で抜け出せないとわかると、今度はハボックの顔に指を伸ばした。ほっぺたをつねったり鼻をひっぱったりしてくる。
「イタ、イタイですって、ちょっと」
「離せ、バカモノ!」
「もうちょっと付き合ってくださいよ。じゃあ、1ラウンド」
「は!?なななな、お前、昨日あんなにやっといてまだする気なのか!?」
「だって、朝から大佐がかわいかったんですもん。そう、全部大佐のせいなので、コレ、責任とってくださいね」
笑って恋人の体に、自分の中心をいやらしく押し付けた。二人とも何も身に着けていないので、その感触はあますことなく伝わっただろう。
にっこり笑って、甘えた素振りさえ見せて、自分を絶対に逃がさない年下の男。自分の恋人。
その青い瞳に慈しみと情欲の色を見て、ロイもまたたまらない気分になった。
愛し、愛される喜びをこの男に出会ってから知った。
愛し愛されてこんなにぐずぐずにダメになってゆく自分がいることを初めて知った。
おぼれるほどの幸せをこの男がくれる。
「私が、イヤだと言ったら?」
「襲いますね。襲って欲しいですか?無理矢理ももえる?」
にやりと笑って男はロイの中心にそっと手をまわした。見なくても分かる。先ほどのキスで少し反応している。
「!」
「そういうプレイがお好みなら、俺も協力しますけど?」
何もかも知られている。悔しいが。
最近少し生意気になってきたように思う。年下のくせに、部下のくせに。
でも、そんな彼に自分はそりゃあもうめろめろのぐずぐずなのだ。
ロイはこちらの様子をうかがっているハボックの首に両腕を回して、耳元に唇を寄せた。
「いつもの、がいい」
自分の声も幾分媚びているな、と思った。
いつものように、優しく自分のすべてを奪い取っていくような抱き方をしてくれ、とねだった。
ハボックは目を細めて本当に嬉しそうな顔をして、だがそのしぐさは捕食する獣のそれのようで、ロイは満足して目を閉じた。
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20060420UP