すき、かわいい、キスしたい君





「…な、なんだよ、人の顔じろじろ見て」
「んー…、なんかちょっとキスしてぇなって思った」
「は? 誰に?」
「誰って、お前に」
「…おい、あんた本当に大丈夫か? やっぱり飲みすぎたんだろ」
「えー、だってお前見てたらなんかしたいなあって…」
「意味が分からない。酔っ払いの相手はしたくない。そんなこと言ってんなら俺、先に帰るよ」
「待て待て。んじゃその前に俺とキスしよ」
「……。あんた、酔っ払うとキス魔になるのか?」
「んーv」
「馬鹿、それ以上顔近づけるな。そういうのは好きな相手とやるもんだろ。そんなにしたいんなら彼女に電話しなよ、ほら」
「好きな相手…となら出来るのに、俺とは出来ないのかよ。俺のこと嫌いなのか、クラウド」
「…なあ、俺たち会話が成立してない気がするんだけど。そもそもなんで俺が男のあんたとキスしなきゃならないわけ」
「俺が、したいから」
「俺はしたくない」
「えーっ」
「えーっじゃない」
「じゃあ、じゃあひとつ質問ですクラウド君」
「……何」
「クラウド君には好きな人がいるんですか。キスしてもいいっていうコ…いやいや、そもそもしたことあるのかが気になります!」
「…何それ。君とかですます気持ち悪いんだけど。…そんなのザックスには関係ないだろ」
「ものすっっっごく気になるんですっ!」
「……」
「クラウド君〜?」
「…っ、い、いないってば…」
「いないってことは、したこともない?」
「……」
「したこと、な・い?」
「う…うるさいなっ、悪いかよ、あんたと違って俺は…っ」
「へー。そっかそっか」
「ちょ…、なんであんたそんなに嬉しそうに笑って…」
「うんうん、そんじゃまあ、ちょっくら」
「な、なにす…」


ぶちゅっ


「いーただきv クラウドの初キッスv」
「―――な…なななな、な…っ」
「クラウドのお初は俺ってことで、お前ヒストリーに俺の名前がこれで刻まれるわけな。やった。ごちそーさまでしたっと♪」
「あ、あんた、さいてーだっ! この腐れ酔っ払いっ! 死ねっ」
「やー、顔真っ赤にしちゃって初心なんだから。かわいv うあ、いてててて、ちょ、痛いってクラウドっ」
「あんたは今後酒飲むなっ、バカバカバカっ」
「もー照れちゃってーイタタっ」
「今のはカウントされないからな絶対! 俺のファーストキスは、もっとこうちゃんと…っ」
「えー、物足りなかった?」
「!? な、何が物足りな…」
「いや、だからもっとこうしっかりしたやつしたかった? 確かにちょっと吸い付き物足りなかったかもだけど…んじゃあも一回…痛、ちょ、容赦ないのやめてクラウド痛ぇっ。お、俺だってキスは好きな相手としかしたくねぇって」
「だったら今のは何だよ…っ! って、え…、え?」
「そうそう、キスなんて嫌いなやつとはしないだろ、フツー」
「…う、うん、しない…よね…しないけど…。え…?」
「だから、つまり、俺は今お前のことが不意に好きだなーかわいいなーって思ったからしたくなったわけで…」
「かわいいは余計だ。…ひとつ聞くけど、友達って意味でだろ? 普通友達とはキスしないだろ。ほら、しっかりしてよ、ザックス」
「そうだよな。クラウドはトモダチだもんなー。…んー? じゃあなんでしたくなったんだろ?」
「………もうこの酔っ払いヤダ…俺帰る」
「え、じゃあ俺も帰るっ」
「ついてくんな」
「クラウド〜、そんなこと言わずにもう一軒寄ってこーぜ」
「うるさい」
「お前の好きな甘いのどーんとおごるからさ〜、クラウド〜」









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