HAPPINESS+





 セブンスヘブンの夜は長い。

「クラウド、まだ帰らないの? 飲みすぎよ」
「…ティファ」
「なあに? さっきからずっとそんな感じ。言いたいことがあるんならちゃんと言いなさいよ。ザックスと何かあった?」
「……相談が…あるんだ」
「だから何よ。あ、エヴァンズさん、もうすぐ出来るから。ごめんなさいもう少し待って。…で、相談てなに?」
「……ども」
「ども?」
「……子供、俺産めるかな…?」

 がしゃん、とティファの手元でフライパンがコンロにぶつかった。

「……ええと、く、クラウド…?」
「………」
「子供って…、え? う、うむ…?」
「…できないかな…」
「も、もしもしー? クラウド頭大丈夫…?」
「俺だって馬鹿なこと言ってるって分かってるけど、ザックスが…」
「ザックスが子供欲しいって言ったの!? クラウドに産めって!? 何言ってんのかしらあの男…っ!」
「ち、違う、そうじゃないティファ。ザックスは別にそんなこと言ってない」
「じゃあ何でそんなこと言い出したの」
「…絶対可能性がないって言い切れるのかなって思って…」
「こんなこと断言するの心苦しいけど、絶対ないわよ! あったら世の中の女性の存在が全否定されるような気がするわ」
「俺ちょっと人とは違うし、もしかしたらとかないかな…」
「な・い!」
「………」
「…え、待って、そんなに落ち込むことないじゃない」
「…俺、女だったらよかったのに」
「何も子供にこだわらなくたって。クラウド子供欲しくなったの?」
「ザックスは欲しいんじゃないかって思って…」

 クラウドのズボンのポケットから携帯電話が発する鈍い音が響く。
 着信を知らせるバイブレーション機能の振動が発する音だ。

「…出なくていいの?」
「…いい。誰だか分かってる」
「さっきから何度目? いい加減出てあげたら。その誰かさんが、そのうち痺れを切らしてそのドア蹴破る勢いで店に飛び込んでくるわよ」
「……もう少しだけ」
「帰りたくないの?」
「そういうわけじゃないけど…」
「だったら帰りなさいよ。そんなに言うんなら早く帰って子作りでも励んだら?」
「! ティファ!」
「ふふ、ごめんなさい。でもこれくらいは意地悪してもいいわよね? 私が相談された内容に比べたら、ね」
「…ごめん。馬鹿なこと言ってるよな」
「んー、でも、奇跡の連続みたいな波乱万丈な人生送ってるあなたたちなら、もしかしたらってこと、あるかもね?」
「…奇跡、か」
「あ、ほら…」

 ティファが笑ってドアの向こうをクラウドに促した。

「待ちきれなかった王子様が心配で迎えに来たわよ。外でお姫様の帰りを待っているわ」





 しあわせの道を辿って、帰る場所に、おかえりなさい。










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